[メイン] 松本りせ : ここは赤髪中学校、生徒会。

[メイン] 松本りせ : 日々生徒の要望に応えたり、企画への準備をしている。

[メイン] 松本りせ : 時期は1月、もうそろそろ学校も変わってしまうこの頃。

[メイン] 松本りせ : 私たち、生徒会三年生は最後の仕事。

[メイン] 松本りせ : ────卒業式への準備に向けて、日々仕事をしていた。

[メイン] 松本りせ :  

[メイン] 松本りせ : そんな毎日の、寒気が続くある放課後。

[メイン] 松本りせ : 「……………」

[メイン] 松本りせ : ぐぐ、と背伸びをして棚の資料を取ろうとしている。

[メイン] 百地たまて : バァンッ!と、生徒会室の扉が開く。

[メイン] 百地たまて : 「百地たまて!ただいま戻りましたですよー!!」

[メイン] 松本りせ : が、その棚は思ったよりも高い。
149㎝の身長では届かない位だ。

[メイン] 百地たまて : 背の小さな、ツインテと白いリボンが特徴的な少女が入ってきて……。

[メイン] 百地たまて : 「……おや!」

[メイン] 松本りせ : ……はて、困った。

[メイン] 百地たまて : りせのもとへ、とてとてと歩き。

[メイン] 百地たまて : 「必要なのはこれですかな!」
棚の資料を取る。

[メイン] 松本りせ : むむと唸っていると、音にびくり。

[メイン] 百地たまて : 身長153cm、微妙にたまての方が高いのである!

[メイン] 百地たまて : 「はい、どーぞですよ!会長!」

[メイン] 百地たまて : にっこりと笑いながら、なんか小難しそうな資料を手渡す。

[メイン] 松本りせ : 流れるようにして手に取ったたまてに。

[メイン] 松本りせ : 「…………ほわ」
と、小さな小さな声で。

[メイン] 松本りせ : ぺこり。

[メイン] 百地たまて : 「りせ会長さんはいつも真面目でお利口さんですな~!」

[メイン] 松本りせ : ありがとうのお礼を。

[メイン] 百地たまて : うんうんと頷きながら、感心といった様子。

[メイン] 百地たまて : 「いえいえ!トーゼンのことをしたまでですよ!」

[メイン] 百地たまて : ブイッ!とピースサイン。

[メイン] 松本りせ : そして、資料を受け取り。
……いつもたまてには感謝しか、ない……

[メイン] 百地たまて : 言葉としてのやり取りはしてはいないが、りせの伝えたいことはなんとなーく分かるたまて。

[メイン] 松本りせ : 「…………?」
首をかしげながらも、ピースサインを返す。

[メイン] 百地たまて : 「ほわわ!」

[メイン] 百地たまて : 目を爛々と輝かせ、りせのピースサインを見る。

[メイン] 百地たまて : やっぱりりせ会長は!いつ見てもきゃわわですよ~~!!

[メイン] 犬吠埼たま : すでに賑やかな声が聞こえてくる生徒会。
自分はそろり、そろりと覗き込む。そして、邪魔しないようにか細い声で。

[メイン] 百地たまて : 「……おや!!」

[メイン] 百地たまて : そんな足音にも直ぐに気が付き、生徒会室の入り口の方へ、パッ!と見て。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「よっ!たま!」
後ろから元気に声をかけて一緒に入ってくる

[メイン] 松本りせ : 「………」
………わ、嬉しそうでよかった。

[メイン] 犬吠埼たま : 「…………ぉ…… ひゃあっ!」
おつかれさまです今日もよろしくお願いします、と言おうとしたが
先に気づかれて、しかも気づいたときには後ろからも声をかけられ。

[メイン] 百地たまて : 「これはこれは!わんちゃんの方のたまちゃんに……やや!梅先輩!」

[メイン] 百地たまて : 元気よく、2人に手を振る。

[メイン] 松本りせ : そして、小声を聴き取って。

[メイン] 松本りせ : 『こんにちは』
と、とても小さな小さな声で。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「どうした~?梅はたまを取って食ったりしないゾ!」

[メイン] 百地たまて : 「はいな!今日もよろしくお願いしますですよ!」
もう1人のたまへ、にっこりと笑ってみせる。

[メイン] 松本りせ : 軽く、二人に手を振る。

[メイン] 百地たまて : 「……く、食う……!」

[メイン] 百地たまて : ごくりと唾を飲みこむ。

[メイン] 松本りせ : 「……………」
たまて…食うって言うのは、そのままの意味じゃないよ

[メイン] 百地たまて : 梅先輩が、わんちゃんの方のたまちゃんへ"イタズラ"する光景を思い浮かべ……。

[メイン] 百地たまて : 「……イベントスチル!」

[メイン] 犬吠埼たま : 「……取って、た、食べちゃうの……!?」
思わず真に受けかけて、ちょっと動揺するけど。梅ちゃんはそんなことしないとすぐにわかって、ほっと息をついた。

[メイン] 松本りせ : 「………!」

[メイン] 百地たまて : あらぬ妄想を企てる。
ニマニマしながら。

[メイン] 松本りせ : たまての裾を、くいくい。

[メイン] 松本りせ : 「………」
何考えてるの、と言いたげな顔で。

[メイン] 百地たまて : 「いやはや~……お昼にそのような熱々のイベントスチルの素をくださり、感謝感謝なのですよ……やや?」

[メイン] 百地たまて : りせの方を向き。

[メイン] 百地たまて : 「いかがしましたか会長殿!」
敬礼ポーズを取り。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「りせに任せきりでさぼってるからナ!たまには手伝いに来たゾ!」

[メイン] 犬吠埼たま : 「は、はぃ……」
たまには、と言われて思わず反応してしまう。けれどそれは自分の名前を呼ばれたわけではないと気づいて、すぐに声を小さくする。

[メイン] 松本りせ : 「…………」
考えてもいいけど、そういうのは終わってからだよ
と、見ておく。

[メイン] 百地たまて : 「うぐっ!」

[メイン] 百地たまて : な、なんですと……!?

[メイン] 松本りせ : 「………」
梅の言葉に、ぱぁっと顔を輝かせて。

[メイン] 松本りせ : 『ありがとう』
ぺこぺこ。

[メイン] 百地たまて : 「……脳内を見抜かれてしまいましたか……!いやはや、りせ会長には敵わないですよー!」

[メイン] 百地たまて : 「おっと!そうですよ!今日は珍しく梅先輩がお手伝いに来てくれた日ですからねー!」

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「ここは怒るところなのに変わったやつだナ!」

[メイン] 百地たまて : 「ちゃちゃちゃっと書類仕事を片付けて、優雅なティータイムにしちゃいましょう~~!!」

[メイン] 百地たまて : 元気よく拳を突き上げ、気合十分な様子を見せる。

[メイン] 松本りせ : 指を3本立て、その次に1本追加で立てる。

[メイン] 犬吠埼たま : 「え、えっと……はい!」
書類仕事。皆は何だかんだささっと終わらせられるのに、たった一枚、二枚、しかも簡単な書類でも私は何度も読み返す。

[メイン] 松本りせ : その後👍を送る。

[メイン] 松本りせ : 「…………」
多い方が、いいもんね…

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「そだナ」
書類に認証の半を押しながら

[メイン] 百地たまて : 「いえす!三人寄れば文殊の知恵!四人寄れば……」

[メイン] 百地たまて : 「……何の知恵でしょーね?」

[メイン] 百地たまて : 首を傾げながら。ぽか~んとした表情。

[メイン] 松本りせ : ぽふん、と近くの椅子に座り。
書類を片付けている。

[メイン] 犬吠埼たま : 「……四人……えっと、ええっと……」
なぜか私は三人寄れば以上があると思って、悩みこむ。

[メイン] 百地たまて : おっと!皆さんお仕事初めてますね!
私もちゃんとやらねば怒られてしまうです!やる時はちゃんとやるということを見せつけますよー!

[メイン] 松本りせ : 「……………」
一枚、いらない紙に文字を書いて、たまてに渡す。

[メイン] 松本りせ : 【菩薩とか?】

[メイン] 百地たまて : 「ん?」
席に座り、書類を見る前に、りせに手渡された紙を見て。

[メイン] 百地たまて : 「菩薩」

[メイン] 犬吠埼たま : 「ん、んー……」
気づけば書類が手つかずになるほどに悩む。
三人寄れば……えっと。三人もなんだっけ……

[メイン] 犬吠埼たま : 「! ……ぼ、菩薩?」

[メイン] 百地たまて : もう1人のたまの言葉に頷き。

[メイン] 松本りせ : 「…………」
少し自慢げな顔で。

[メイン] 百地たまて : 観音菩薩のポーズをとってみる。

[メイン] 百地たまて : 「ふっふっふ~……つまり今の私達は、菩薩モード!」

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「梅も珍しくきたから菩薩仲間だナ!」

[メイン] 松本りせ : 「………」
おお……!!

[メイン] 百地たまて : 「いぇーす!梅先輩は菩薩のように優しいですからねー!」

[メイン] 犬吠埼たま : 「……」

[メイン] 松本りせ : ぱちぱち、と軽く拍手。

[メイン] 百地たまて : 「そしてこのたまちゃんもですよ!菩薩のように清らか―な心の持ち主です!ドヤ!」

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「たま……?どっか具合悪いのカ?」

[メイン] 犬吠埼たま : 「ん、んーん……いつもの皆がこうやってそろって……」

[メイン] 百地たまて : えへへ、いぇ~い。とりせの拍手に応えるようにピースサインを見せ。

[メイン] 松本りせ : たまての言葉に、強く頷く。

[メイン] 犬吠埼たま : 菩薩の事でさえ、私にはよくわからないけど。嬉しい。

[メイン] 百地たまて : 「……むむ?」
わんちゃんの方のたまを見て。

[メイン] 犬吠埼たま : 私も、菩薩のポーズを取ってみる。

[メイン] 松本りせ : 「………」
たまては、生徒会活動を欠かさず来てくれた。
だから、偉い

[メイン] 松本りせ : 「………!!!」

[メイン] 百地たまて : 「おぉぉ~~!!?これは……私のライバルのたま菩薩!!」

[メイン] 松本りせ : たまもポーズしたことに、意外そうな顔を向けて。

[メイン] 松本りせ : 拍手を送る。

[メイン] 百地たまて : 「負けられんとです!私も"たま"として!おりゃ~!」
負けじと菩薩ポーズ。

[メイン] 百地たまて : ※書類仕事は一切進んでいない。

[メイン] 犬吠埼たま : 「ひゃっ! ら、ライバル? わ、私……ライバルにもなれな……あっ」
ポーズを返してくれて、そしてりせちゃんの拍手が送られて。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「別の仏像みたいに手がたくさんあれば仕事も早く片付くんだけどナ!」

[メイン] 犬吠埼たま : 私は胸がいっぱいになるほど。嬉しくなりながらも、簡単な書類にさえ苦戦をしながらも目を通していく。

[メイン] 松本りせ : 「…………」

[メイン] 百地たまて : 「お手手いっぱいほしいですね!書類仕事しながら、背中かゆい~!ってなってしまった時に、掻き掻きできますからね!」

[メイン] 百地たまて : 「………あっ!!」

[メイン] 松本りせ : たまてにジト目が送られる。

[メイン] 松本りせ : 「………?」

[メイン] 百地たまて : 何かに気づいてしまったような顔。

[メイン] 松本りせ : 首を傾げ、たまての方へとみる。

[メイン] 犬吠埼たま : 私は……生徒会のお手手になれてるのかな……と思っていると
百地のたまちゃん(一対一だからどっちもたまちゃんで構わないと言われたから)の方を見て、きょとんとしていた。

[メイン] 百地たまて : 「……手が増えちゃうと!!着れる服が無くなっちゃうですよーー!!!袖は1つの服に2つまでですから!!ぷぎゃ~~~!!」
超どうでもいいことであった。

[メイン] 犬吠埼たま : 「……ふふっ」

[メイン] 犬吠埼たま : 私は思わず、笑みをこぼしていた。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「なあにアオザイみたいにして横全部開ければいいゾ」

[メイン] 松本りせ : 「……………!」

[メイン] 犬吠埼たま : 「! 梅ちゃん賢い……!」

[メイン] 松本りせ : それは確かに……!!

[メイン] 百地たまて : 「あ!それセクスィ~でいいですね!」
梅先輩の方に、体をズイ!と。

[メイン] 松本りせ : むむ、と唸るポーズをして。

[メイン] 百地たまて : ※書類仕事は現在も、一切進んでません。

[メイン] 松本りせ : 「…………」
背中が空いてる服を着よう

[メイン] 松本りせ : なんて思いながら、書き書きと。
書類を勧める。

[メイン] 百地たまて : 「……ほほう~!りせ会長!」
目を細めながら。

[メイン] 百地たまて : 「そういう服に興味、大アリと言ったところですね~?」

[メイン] 犬吠埼たま : もう卒業も控えているけれど。私なんかが、流されて流されて
誘われて、いつのまにか生徒会に来ちゃって……本当によかったのかな?

[メイン] 松本りせ : かきかき…………ぴたっ

[メイン] 百地たまて : 指でL字を作り、自身の顎に添え。

[メイン] 松本りせ : 「………!?」

[メイン] 松本りせ : あわあわ、と手を振る。

[メイン] 百地たまて : ふっふっふ~~……これはイベントスチルを見れる好機……!!
皆さんの分のアオザイ……作っちゃいましょうかね~……!!

[メイン] 百地たまて : ふっふっふ、と企むたまて。

[メイン] 松本りせ : 「…………」
別に興味があるわけでは……

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「おあついナー!梅とたまが置いてきぼりだゾ」

[メイン] 犬吠埼たま : 「……?」
また、たまちゃんの方を見ると
ずっと一緒にいたから……何か企んでいる事に気づくけど、深く考えられる頭を私は持ってなくて。

[メイン] 百地たまて : 「……うにゃっ!?」
梅先輩の方を向いて。

[メイン] 松本りせ : 「………」
たまの思い悩む様子を、見て。

[メイン] 百地たまて : 「おあついとはなんですかー!ぷきー!」
顔を若干赤くしながら。

[メイン] 松本りせ : またも、👍を送る。

[メイン] 犬吠埼たま : 「……!」
りせちゃんがこちらに親指を立ててきたのを見て、私も思わず

[メイン] 犬吠埼たま : 👍

[メイン] 犬吠埼たま : 「…………」
これでいいのかな?

[メイン] 松本りせ : ……たまちゃんは無口だけどちゃんと、考えてる。
仕事だってちゃんとこなしている。
そこが偉いと思う。

[メイン] 百地たまて : 「そーゆー梅先輩とわんちゃんの方のたまちゃんだって!さっきアツアツだったじゃないですか~!」

[メイン] 松本りせ : それが含んでいる、👍。

[メイン] 百地たまて : ぷりぷりと、言い返すように。

[メイン] 松本りせ : 伝わるかは、わからないのだが。
本人は満足して、また書類仕事に戻っている。

[メイン] 犬吠埼たま : 「あっ、あっ、やっぱり、わ、私……梅ちゃんに取って食べられちゃう……?」

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「そうみえたカ?なあたま~?」
肩を軽くもむ

[メイン] 犬吠埼たま : さきほどの出来事をまた「掘り返して」
そう返していた。

[メイン] 百地たまて : 「食べ……ゴクリ!」

[メイン] 松本りせ : 「………」
おあつい………

[メイン] 百地たまて : 音を鳴らして唾を飲みこんでしまう。

[メイン] 百地たまて : ……大人な世界……!!

[メイン] 百地たまて : 過激なイベントスチル~~~!!

[メイン] 松本りせ : 「……」
いや、普通にお話してただけじゃないかな…

[メイン] 百地たまて : 「ほへ?そうなんですかね?」
りせの方を向き。

[メイン] 犬吠埼たま : 「た、たまちゃんも……!?」
百地のたまちゃんが唾を飲み込んだ音を聞いて、たまちゃんにも狙われてるんだと勘違いしてちょっと肩身を震わせる。

[メイン] 百地たまて : 言葉には出していないため、普通は聞き取れないが。

[メイン] 百地たまて : りせの言いたげなことを察し、自然に会話を行う。

[メイン] 松本りせ : こくり、と頷いて。

[メイン] 松本りせ : 「………」
でも、仲がいいと思う

[メイン] 犬吠埼たま : 「……あの……! その……」

[メイン] 百地たまて : 「………ほへ?わ、私は無害ですぞ~~!!女の子は食べるものじゃあありません!」
わんちゃんの方のたまちゃんの方を向き。

[メイン] 百地たまて : 「愛でるものです!」
ビシィ!と指差し。

[メイン] 犬吠埼たま : ふと、わたしは先ほどの事を訊きたくなった。

[メイン] 犬吠埼たま : 「えっと……わたしと、梅ちゃんって熱い……のかな?」

[メイン] 百地たまて : 「ふむ」

[メイン] 百地たまて : わんちゃんの方のたまちゃんの問いに対して、りせの方を向き。

[メイン] 百地たまて : 普通の表情で、そうですよね?みたいな顔で。
黙って頷く。

[メイン] 松本りせ : 「………」
相変わらずだなあ……
なんて思いながら、たまとたまてを見て。

[メイン] 犬吠埼たま : 「……えっと……」
梅ちゃんに軽く揉まれた肩に触れる。

[メイン] 松本りせ : 「…………」
仲は、いい

[メイン] 犬吠埼たま : その時、まだ私の肩に梅ちゃんの手が置かれていて。

[メイン] 犬吠埼たま : ふと、その手に触れてしまう。

[メイン] 犬吠埼たま : 「きゃっ」

[メイン] 松本りせ : 「………」
私が保証する。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「ん?冷たかったカ?」

[メイン] 百地たまて : ………こ、これは……!?

[メイン] 犬吠埼たま : 「えっ、あっ、んん……あたたかい……」

[メイン] 松本りせ : 「…………」

[メイン] 百地たまて : イ、イ、イ……イベント、スチル………!!

[メイン] 松本りせ : じっと、二人のやりとりを見て。

[メイン] 松本りせ : 「…………」

[メイン] 犬吠埼たま : わたしの事をこれだけ気遣ってくれる人が、こんなにいて。
嬉しかった。けれど……卒業したら、私はきっと一緒の高校にも上がれない。上がれたとしても物覚えが悪すぎて、わたしはきっとついていけない。

[メイン] 犬吠埼たま : この生徒会の一時は、中学卒業まで。

[メイン] 百地たまて : 手でL字を作り、両手を合わせ、カメラのようにしてみせ。
梅先輩とわんちゃんの方のたまちゃんを枠に納める、ようにしてみる。

[メイン] 松本りせ : 二人に夢中になっているであろう、たまての。
手にそぉっと、触れてみる。

[メイン] 百地たまて : 絵になっておりますね~~~~~!!
……ほにゃ

[メイン] 百地たまて : 自分の手の甲に、りせの手が触れられ、ドキッ、とする。

[メイン] 百地たまて : 冬の季節ということもあり、りせの手は冷たく。

[メイン] 百地たまて : でも。

[メイン] 百地たまて : なんだか"温かく"。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「どした?変な顔になってるゾ?」
たまの顔を覗き込み

[メイン] 百地たまて : 「……り、りせ、会長?  ……ど、どうしたのですかー!?」

[メイン] 犬吠埼たま : 「あっ……」
りせちゃんの手が、たまちゃんの手に乗せられてるのを見る。
事故だけど、わたしが梅ちゃんにやっちゃったのも同じ……?

[メイン] 松本りせ : 「…………」
……なんだか、あったかい。

[メイン] 百地たまて : ガチゴチになりながら、りせの方を向き。

[メイン] 犬吠埼たま : 「ひゃっ! 変……? ご、ごめんなさい」
思わず謝ってしまう。

[メイン] 松本りせ : 「………」

[メイン] 百地たまて : 「……あったかい、です、か?……ふ、ふふ~!」

[メイン] 松本りせ : 何か考えたような顔をして。

[メイン] 松本りせ : 「………」
……寒かったから、なの

[メイン] 百地たまて : 「そーですともー!私は自慢のたまカイロですからー!」

[メイン] 松本りせ : そう、少し照れたような顔で、触れていた。

[メイン] 百地たまて : もう片方の手で、自分の胸を軽く叩いてみせ。

[メイン] 百地たまて : その時に、何故か。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「いやそうじゃなくて……心配事でもあるのカ?」

[メイン] 百地たまて : 自分の心臓の鼓動が、速まっていることが、自分でも感じられた。

[メイン] 百地たまて : あうぅ。

[メイン] 犬吠埼たま : 「えっ……」
心配事。それを言ったら、きっと……この空気が壊れちゃうかも。
私は首を横に振って。

[メイン] 松本りせ : ………寒かったから、というのは半分本当で。

[メイン] 百地たまて : 「……さ、寒かったら、どーぞどーぞ!私の体を使ってくださいな!」
りせに、ニッコリと笑いながら。

[メイン] 犬吠埼たま : 「ううん……大丈夫です、心配してくれてありがとうございます」
少したどたどしくなりながらも、わたしはやっと簡単な書類を一枚終えた。

[メイン] 百地たまて : 「新陳代謝では誰にも負けませんぞ~!」
冗談めいた口調ながらも、どこか焦っているようにも見え。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「そっか!梅の勘違いだったか、ごめんナ」

[メイン] 松本りせ : 冷えた風にあおられた手と。

[メイン] 犬吠埼たま : 「えっ、あっ」
梅ちゃんに逆に謝らせてしまった。

[メイン] 松本りせ : なんだか、寂しいような。
心が寒いような、そんな気がして。

[メイン] 松本りせ : こく、とその言葉に頷く。

[メイン] 犬吠埼たま : ……私は、また不意に先ほどのような表情を浮かべる。

[メイン] 松本りせ : ……あ、たまてちゃん……焦ってる…のかな。

[メイン] 松本りせ : ……なんだか、可愛いな…

[メイン] 百地たまて : 何故だか、私は、すっごくドキドキしてしまっています。

[メイン] 百地たまて : なんで、なんでしょうか……。

[メイン] 松本りせ : そうして、自らのもう一つの空いた手で、握りしめて。

[メイン] 百地たまて : ぷきぃ~~~~~……!!!こんなの、私らしくないですよ~~~!!!

[メイン] 百地たまて : 「……っ!」

[メイン] 百地たまて : りせの両手で包み込まれた、自分の手を見つめて。

[メイン] 松本りせ : にこ、と。
少し口角が上がる。

[メイン] 百地たまて : ドキン。と心臓が跳ね。

[メイン] 百地たまて : 「………あ、あはは~~!」

[メイン] 松本りせ : 「…………」
…うん、しっかり温かい

[メイン] 百地たまて : 「ちょっと暖房、効きすぎかも、ですね~!この部屋!」

[メイン] 犬吠埼たま : たまちゃんと、りせちゃんの手があんなにも重なって。
……きっと、二人はずっと友達。少し笑みを浮かべながらも、わたしはきっとこうはなれないと思って、書類に向かって目を……逸らした。

[メイン] 松本りせ : 何だか触れる度に、より”体が冷える”。

[メイン] 犬吠埼たま : うらやましい……。

[メイン] 百地たまて : 「………あ、温かいです?……ふ、ふふ~ん、もっと褒めてもいいんですよりせ会長~」

[メイン] 松本りせ : 触れたくなる、熱を求める飢餓。
それが一層、増すように。

[メイン] 百地たまて : 「………?」

[メイン] 百地たまて : そんな心中のりせに気が付かず。

[メイン] 百地たまて : 「……りせ会長?どったのです……?」
きょとん、と首を傾げ。

[メイン] 吉村・thi・梅 : う~んやっぱり変な気がするんだけどナ
一度引いてのぞき込むわけにもいかないし

[メイン] 百地たまて : ……なんだか、不安にもなってくる。

[メイン] 松本りせ : 「…………」
………え?

[メイン] 百地たまて : 私は、ずっとりせ会長とは仲良しこよしでした。

[メイン] 松本りせ : 慌てて、きょとんとした顔を向ける。

[メイン] 犬吠埼たま : わたしは、梅ちゃんの手に思わず触れてしまった方の手をちらっ、ちらっ、と見る。
……手を繋いだことはあるけれど、あの温もりはなんで違ったんだろう?
けれど、梅ちゃんにまた謝らせるような事しちゃったらダメだもんね。

[メイン] 百地たまて : 長い付き合いの自信があるですよ。
だからこそ、りせ会長は無口ながらも、ちゃんと伝えたいことがあるって分かって。

[メイン] 松本りせ : ……たまては、私の友だちで。
無口な私の言いたい事をいつも代弁してくれたし、今の生徒会長の立場に入れるのも、全て彼女が手伝ってくれていたから。

[メイン] 百地たまて : その意図を、阿吽の呼吸とでも言えばいいんでしょうか。
これまでずっと汲み取ってきたのですよ。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「お!」
ポンと手を打つ

[メイン] 百地たまて : でも、今のりせ会長が考えていたことだけは、全く分かんなくて。
まるで、私に隠し事をされたみたいで。

[メイン] 百地たまて : 不安になってしまった。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「手が寒かったんだな。これ貸してやるゾ」
たまに手袋を渡す

[メイン] 松本りせ : だから、その度に感謝をして、それが増すたびに、ずっと熱くなる。

[メイン] 松本りせ : 「………」
えっと、その………大丈夫、だから

[メイン] 百地たまて : 「……そ、そう……です、か……?」

[メイン] 犬吠埼たま : 「ぁっ」
資料と、自分の手を見ていた時に不意に、それは渡された。

[メイン] 犬吠埼たま : 「う、梅ちゃん……いいの?」

[メイン] 百地たまて : 先程のたまてとは変わり、少し小さな声気味で、りせ会長に返す。

[メイン] 百地たまて : なんだか、モヤモヤな気分ですよ。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「構わないゾ!梅はほら手はあったかいからナ!」
そう言って両手でたまの手を包む

[メイン] 松本りせ : ……飢える、という事は厄介だ。
いつまで経っても満たされなくなるし、求める分だけ求めたくなってしまう。
空くことがない、入れるだけどんどん欲しくなる。

[メイン] 松本りせ : 「………」

[メイン] 松本りせ : その声に、少ししょんぼりとした顔で。

[メイン] 松本りせ : …でも、この気持ちは……伝えられない、のだろうか。

[メイン] 犬吠埼たま : 「! 梅ちゃん……」
包み込まれた手は、今まで感じた温もりが、一点に籠もったように感じられるほどあたたかくて。
わたしは、思わず梅ちゃんのまっすぐな瞳を、見つめ返していた。

[メイン] 犬吠埼たま : 吸い込まれそうだった。

[メイン] 百地たまて : たまては、まだずっと、書類仕事に手を着けられないままでいた。

[メイン] 松本りせ : …ふと、パッと手を離して。

[メイン] 犬吠埼たま : わたしには無い瞳。わたしには無い温もり。
それが全部わたしに注がれて。

[メイン] 百地たまて : 「……あ」

[メイン] 百地たまて : 離れた手を惜しむように見つめながら。

[メイン] 松本りせ : 書類仕事へと、戻る。

[メイン] 百地たまて : 「………むぅ」

[メイン] 百地たまて : そんな様子を見て、ようやくたまても、書類仕事に移るのであった。

[メイン] 松本りせ : ……名残惜しいけど、いつまでも甘えることは……出来ない。

[メイン] 百地たまて : ぶー垂れた表情で。

[メイン] 松本りせ : ぽんぽん、書類仕事を進めていくが。

[メイン] 松本りせ : 「…………ぁ」

[メイン] 松本りせ : 小声で、思わずつぶやく。

[メイン] 百地たまて : 書類の内容が、頭に入ってこない。
茫然と書類に判子を押し続けていた。

[メイン] 松本りせ : 残った一つ。
書かれたものは、”卒業式予行”

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「まあともかく、それかしてやるヨ!」
手を放して手袋を手渡いた

[メイン] 百地たまて : 「……?」
りせの"声"に反応し。

[メイン] 犬吠埼たま : わたしは、包み込まれた手から自分の手をするりと解く事はせず。
梅ちゃんが離すまで。梅ちゃんの温もりと同じになるまで、そのまま包まれたままでいた。けれどそれは、すぐに終わってしまった。

[メイン] 犬吠埼たま : 「ぁ……ありがとうございます……!」
名残惜しさを感じながらも。

[メイン] 百地たまて : 「……りせ会長?どうしたの、ですか?」

[メイン] 松本りせ : 「…………」
最後の紙を、指さす。

[メイン] 百地たまて : 「ふむ」

[メイン] 松本りせ : 【3月 卒業式予行】

[メイン] 松本りせ : ……そう、もうすぐすれば。

[メイン] 百地たまて : ……ふむぅん。

[メイン] 犬吠埼たま : 手袋をゆっくりとはめると。梅ちゃんの温もりを閉じ込めた。
あたたかい。あたたかいけれど。……わたしはりせちゃんの見せた紙を見て。

[メイン] 松本りせ : 中学3年生である私たちは、卒業する。

[メイン] 犬吠埼たま : 『現実』を思い知る。

[メイン] 百地たまて : ……卒業、それは……"お別れ"を意味する言葉。

[メイン] 犬吠埼たま : 「…………」

[メイン] 犬吠埼たま : わたしは思わず黙り込んで。先ほどの温もりが一気に冷めてしまいそうなほどに。

[メイン] 松本りせ : 「…………」
もうすぐ、お別れだね……。

[メイン] 百地たまて : 「……あ、あはは~」

[メイン] 百地たまて : 繕った笑顔で笑いながら。

[メイン] 百地たまて : 「いやぁ、早いですね~!もうそういうシーズンですか!」

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「高校は同じにしてないのカ?」

[メイン] 松本りせ : 少し、沈んだ顔で。書類を整理していた手が止まる。

[メイン] 百地たまて : 「……」
梅先輩の言葉に、だんまりと。

[メイン] 犬吠埼たま : 梅ちゃんのその一言が耳朶に触れる。
瞬間、わたしは息をのんだ。

[メイン] 百地たまて : 「……学力が、足らんのですよ……」
ガク。と肩を落として。
りせの方を、ちらりと一瞥。

[メイン] 松本りせ : あせあせ、とたまてに目線を送る。

[メイン] 松本りせ : そう、りせは教えるのが下手だ。
無口だから当たり前と言えばそうなのだが。

[メイン] 松本りせ : 「…………」
ごめんね……

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「まあ高校が違っても一生の別れってわけじゃないだロ、会いにいけないわけじゃないし」

[メイン] 犬吠埼たま : 「……高校にも行けるのかな……わたし」

[メイン] 犬吠埼たま : そうぽつりとこぼしていた。

[メイン] 百地たまて : 「い、いえいえ……私が不甲斐ないのが悪いのですから……!」

[メイン] 百地たまて : 本音を言えば、たまては、りせと同じ高校へ進学したかった。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「就職するやつだっているサ」
肩をポンポンと叩く

[メイン] 百地たまて : でも、学力に差があった。地力というもの天と地の差があった。

[メイン] 松本りせ : りせ自身、成績や生徒会長という実績もあり。
親や周りに誘われ少しレベルの高い所を狙っていた。

[メイン] 百地たまて : りせ会長のレベルに、どうしても及ぶことができない、高い壁。
今も頑張って勉強して乗り越えようとしているが、届かなくて。

[メイン] 百地たまて : 我儘を言えば、りせ会長には、レベルを落としてもらって
自分と同じ高校に進学してほしかった。

[メイン] 百地たまて : でも、そんなのは

[メイン] 百地たまて : ……言えないですよ。

[メイン] 犬吠埼たま : 「就職も……できるのかな?」
わたしが物覚えが悪い事を、真剣に考えてくれて簡単な書類を渡してくれる皆。
けれど、就職したらそんな甘い事ばかりじゃないのはわかっていて。

[メイン] 松本りせ : ……本音を言うのであれば、みんなと同じ場所に行きたかった。
けれど、この。

[メイン] 百地たまて : 「……まぁ、そうですよね……一生の別れにはならんですから、あはは~……はぁ」

[メイン] 松本りせ : ”生徒会”は、もう終わりなのだ。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「学校の勉強が向いてないだけで仕事の才能はあったなんてのもよく聞くゾ」

[メイン] 百地たまて : 深いため息を一つ。

[メイン] 犬吠埼たま : 「そ、そうかな? …………うん」
その才能を掘り当てるのにどれだけの時間を費やすのだろう。
その間に、きっと、「生徒会」が終わった後の仲は、この寒空のように

[メイン] 犬吠埼たま : 次第に冷めていく。

[メイン] 犬吠埼たま : そんな気がして。

[メイン] 百地たまて : どんよりとした空気が、生徒会室に立ち込める。

[メイン] 松本りせ : 「………」
深くは見せないものの、顔は沈んでいて……。

[メイン] 松本りせ : 「………」
でも

[メイン] 百地たまて : 「………えぇ~~い!!おりゃおりゃおりゃ~~~!!」

[メイン] 犬吠埼たま : なんだか、梅ちゃんのくれた手袋を二度と外したくないとまで思えた。
外したら、梅ちゃんの温もりさえもすぐ忘れてしまう気がして。

[メイン] 犬吠埼たま : 「ひゃっ!?」

[メイン] 百地たまて : 切り替えるように、書類仕事をパパパッ!と終わらせていく。

[メイン] 松本りせ : 「……」
だからこそ、今の時間を……!?

[メイン] 百地たまて : ※割と適当に。

[メイン] 松本りせ : 声にびっくりし、肩が跳ねる。

[メイン] 百地たまて : 「……よし!!これで終わりですよ!!」
そうして、書類仕事を完遂する。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「はははっ!確かに先の心配はこれが終わってからだナ」
本格的に仕事を終わらせた

[メイン] 百地たまて : さて、後やることは……。

[メイン] 百地たまて : 最後の日が来るまでに、私達がやるべきことは。

[メイン] 百地たまて : 一つ。

[メイン] 百地たまて :  

[メイン] 百地たまて : 思い出作り。

[メイン] 百地たまて :  

[メイン] 百地たまて : 「………提案があります!」

[メイン] 犬吠埼たま : 「は、はい!」
わたしは皆が仕事を終わらせる中、最後まで簡単な書類に目を通し続けて。
やっと判を押した。

[メイン] 百地たまて : 指を突き上げる。

[メイン] 松本りせ : 「…………」
ふむ、と言った顔をたまてに向ける。

[メイン] 百地たまて : 「皆さん!!この後……一緒に遊びにいきませんか!」

[メイン] 松本りせ : 「………」
唐突な提案に、首をかしげていたが。

[メイン] 松本りせ : 卒業式、を思い出し。

[メイン] 松本りせ : 「………」
……うん、いいかも

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「気分転換にイイナ、梅は賛成だゾ」

[メイン] 犬吠埼たま : 「! 遊びに? えっと……わたしも!」

[メイン] 犬吠埼たま : 思わず、わたしは席を立ち。

[メイン] 松本りせ : 👍を送る。

[メイン] 犬吠埼たま : 「わたしも賛成、です!」

[メイン] 百地たまて : 「はいな!わんちゃんの方のたまちゃんもですよ!」

[メイン] 百地たまて : グッジョブサインを送り。

[メイン] 百地たまて : 「では、全会一致で可決!でよろしいですね会長!!」

[メイン] 百地たまて : キラキラとした目を向ける。

[メイン] 松本りせ : 「………」
もちろん、いいよ

[メイン] 百地たまて : 「わ~~~~い!!」

[メイン] 松本りせ : それを示すように、椅子から立ち上がる。

[メイン] 松本りせ : 予行、の書類も終わらせておいた。

[メイン] 犬吠埼たま : 「え、ぇぇっと……! どこに遊びに、いきますか!」
提案はできない、いや、わたしには自信が無いというほうが正しい。

[メイン] 松本りせ : 「……」
その答えに、またふむと考え込む。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「わからん!任せるゾ」
あっけらかんと言って笑う

[メイン] 百地たまて : 「………行く場所、ふんむ!」

[メイン] 百地たまて : 腕を組み考え。

[メイン] 百地たまて : 「何も考えてませんでした!」

[メイン] 犬吠埼たま : 「えっ、ええっ!」
面を食らいながら、次にわたしは……必死に考え始めていた。

[メイン] 犬吠埼たま : いつも、簡単な仕事だけを任せてくれて。
友達にいてくれて。でもわたしからは何もできなくて。

[メイン] 松本りせ : 「………」
考えてなかったの……!?

[メイン] 犬吠埼たま : だから、遊びにいく場所ぐらい。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「はははっ!いきあたりばったりじゃないカ」
お腹を抱えて笑う

[メイン] 松本りせ : ががん、と顔を向けて。

[メイン] 犬吠埼たま : 「……学校」

[メイン] 百地たまて : 「いやはや~~、返す言葉が一切ありませんな~」

[メイン] 百地たまて : 「……ふむ?」

[メイン] 犬吠埼たま : 「この学校、まだ知らないこと……いっぱいある、よね」

[メイン] 犬吠埼たま : 「遊びに行く、とは違うかもしれないけど……」

[メイン] 百地たまて : ……学校……ふむ、ふむ……なるほど……。

[メイン] 犬吠埼たま : 「学校、探索とか……?」

[メイン] 百地たまて : 「……私はいいと思いますですよ!!」

[メイン] 松本りせ : 「……」
それは……いいかも…

[メイン] 犬吠埼たま : 3年間もいたのに、学校の隅から隅を知らないなんて、きっとどの学校も皆当たり前の事だけど。
わたしにはそれぐらいしか思いつかなかった。けれど、たまちゃんが「いい」と言ってくれて。

[メイン] 松本りせ : 輝く目を、たまへと向ける。

[メイン] 犬吠埼たま : りせちゃんの、キラキラとした瞳にもあてられて
わたしはまた笑みを浮かべた。

[メイン] 犬吠埼たま : 「はい! う、梅ちゃんはどうでしょうか……!」

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「ん?みんながいいなら梅もそれに賛成だゾ!」

[メイン] 犬吠埼たま : 「じゃあ、四人で一緒……だけどその……」

[メイン] 犬吠埼たま : 「二人一組になって……手を繋いで……」

[メイン] 犬吠埼たま : 「とか、どうかな……」

[メイン] 百地たまて : ………………………。

[メイン] 百地たまて : ……………。

[メイン] 犬吠埼たま : わたしでも何を言っているかわからないことを、ぽつりとつぶやいた。

[メイン] 百地たまて : 「へ?」

[メイン] 百地たまて : ぽかん、とする。

[メイン] 松本りせ : 「……………」

[メイン] 松本りせ : 「………!?」

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「たまロマンチックだナ!誰か気になる相手でもいるのかぁ~?」
肘でつつく

[メイン] 松本りせ : びくん、と体が跳ねる。

[メイン] 犬吠埼たま : 「……ぁ」
何を言ってるんだろう。手の温もりがあまりにも恋しくて。
そして、たまちゃんとりせちゃんを見てて、何か思う事があったのだろうか。

[メイン] 犬吠埼たま : 「ひゃっ! えっ、はい!」

[メイン] 犬吠埼たま : 思わず肘でつつかれたわたしは返事をしてしまっていた。

[メイン] 百地たまて : 「………わ、私は……私は……むぅん……」

[メイン] 百地たまて : りせの方をちらりと一瞥しながら。

[メイン] 百地たまて : 「………いい、と思います!!!……です!」

[メイン] 松本りせ : そして、むむ。と考え。

[メイン] 松本りせ : 強く強く、頷いた。

[メイン] 犬吠埼たま : よかった。
わたし、皆の為に提案できたんだ……そう考えるだけでも笑みをこぼし続ける。

[メイン] 百地たまて : ……ぷきぃ!?
わ、私はなんで賛同しちゃったです!?

[メイン] 松本りせ : 「………」

[メイン] 犬吠埼たま : 「え、ええーっと……」
わたしは梅ちゃんのくれた手袋を、名残惜しそうにしながらも左手のだけ外した。

[メイン] 松本りせ : たまての裾を、ひっぱる。

[メイン] 犬吠埼たま : 「梅ちゃん」

[メイン] 百地たまて : どう考えても、こう……脈絡のない提案じゃないですかー!
私が言うのもなんですけど!

[メイン] 百地たまて : 「……ほへっ」

[メイン] 松本りせ : 「………」

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「ん?」

[メイン] 百地たまて : ゆっくりと、りせの方を向く。

[メイン] 松本りせ : じーっと、じっと見つめる。

[メイン] 松本りせ : 「………」
私も、たまてと一緒がいい。

[メイン] 百地たまて : 「………ほへ」

[メイン] 犬吠埼たま : 「…………繋いでもいいかな」
梅ちゃんの右手に、左手をゆっくりと近づける。

[メイン] 百地たまて : ぼふん、と顔が真っ赤に、茹蛸状態になる。

[メイン] 百地たまて : きゃ、きゃ、きゃわ、いい……です……!!

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「構わないゾ!」
手を差し出す

[メイン] 百地たまて : 「………へへ、へへへ」
りせに、だらしない笑いを溢しながら。

[メイン] 犬吠埼たま : 「!」
思わず差し出された手を、わたしはぎゅっと握った。

[メイン] 犬吠埼たま : 「……ぁっ」

[メイン] 松本りせ : 「………」
ぅう。

[メイン] 松本りせ : そんな顔をすると、こっちまで恥ずかしくなる。

[メイン] 犬吠埼たま : 握ってしまった。けれどわたしはその手を離さなかった。

[メイン] 松本りせ : つい、顔が赤くなる。

[メイン] 吉村・thi・梅 : (たまはいいやつだナ)
耳打ちする

[メイン] 百地たまて : 「………んへへ、えっと、えっと……じゃあ!行きますか!」

[メイン] 百地たまて : 手の甲をひっくり返し、りせの手を、握り締め。

[メイン] 犬吠埼たま : 「!!」
そうやって、「わたしにだけ」聞こえるようにした梅ちゃんの言葉が
次第に身に染みて、思わず涙を流しそうになった。でも今はこらえて。

[メイン] 犬吠埼たま : 「……ありがとう……!」
感謝の気持ちをつぶやいて。前を見る。

[メイン] 犬吠埼たま : 「はい! 行きましょう……!」

[メイン] 吉村・thi・梅 : (あの二人のための提案だロ)
道すがらも話す

[メイン] 松本りせ : 「………!」

[メイン] 松本りせ : 彼女から手を握られたこと、その事が嬉しくて。

[メイン] 松本りせ : つい、握り返してしまう。

[メイン] 犬吠埼たま : ………わたしはその耳打ちに、何故かすぐには返せず。
でも、だって、確かに、あの二人の温もりが冷めないでほしいから、わたしはあの提案をしたんだと思う。

[メイン] 犬吠埼たま : けれど半分は。

[メイン] 犬吠埼たま : ……この、今繋いでる手の為。

[メイン] 犬吠埼たま : (うん……半分……)
当たってるとまでは言い切らずに、そう梅ちゃんに返した。

[メイン] 犬吠埼たま : 赤髪中学校には、こんな伝説がある。物覚えの悪い私でもなぜか……ずっと記憶に残っていた。

[メイン] 犬吠埼たま : 青春の1ページが進む前に、好きな人に左腕を差し出したら結ばれる。

[メイン] 犬吠埼たま : ……伝説は伝説だよね。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「?」
たまの笑顔に少し違和感を覚えつつ進む

[メイン] 犬吠埼たま : 「あ、なんでも、ないです! 大丈夫です!」
わたしは、この時間が崩れないようにも繕って。ぎゅうっと梅ちゃんの手を握りながら歩を運ぶ。

[メイン] 犬吠埼たま : 窓から覗く、運動部の光景。
わたしには、漫画やアニメで見るような光景のように思える。
運動ができないわたしには、手に届かないもの。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「運動見るの好きなのカ?」

[メイン] 犬吠埼たま : 「うん……でも本当は勉強も芸術も音楽も……誰かがやってるのを見たり聞いたりする方が……好き。わたしは……」
出来ないし、やろうとするとどうしても泣き出したくなってしまう。
わたしが最後までやりとげたのは、生徒会での簡単な仕事ぐらいだから。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「そうか、そういう楽しみ方もありだと梅は思うゾ!」

[メイン] 乃音 :

[メイン] 乃音 : (お熱いわねぇあの二人)

[メイン] 犬吠埼たま : 「うん……! ありがとう」

[メイン] 犬吠埼たま : 「わたし……死んだおばあちゃんがいて……」

[メイン] 犬吠埼たま : 「おばあちゃんも……私にそんな言葉をかけてくれて」

[メイン] 犬吠埼たま : 「だから、だから……嬉しい」

[メイン] 犬吠埼たま : 難しい言葉も、言い回しも、私にはできないけれど。

[メイン] 犬吠埼たま : 感謝の気持ちだけは伝えたい。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「あはは、大げさだな。そういってくれる人は意外と多いと思うゾ」

[メイン] 犬吠埼たま : 「……そうかな? でもりせちゃんや、たまちゃんや、梅ちゃんに褒められたり、優しい言葉をかけられると……何だか胸が熱くなって……」

[メイン] 犬吠埼たま : わたしという存在を憐れんで繕った言葉でもない、からかな?

[メイン] 犬吠埼たま : そう考えた途端。ぎゅっ、と梅ちゃんの手をもっと強く握っていた。
けれど私の小さな手では、これでやっと普通ぐらいの力だ。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「……」
これから卒業するのに、周りの人頼みじゃあこの先苦労を……そんな厳しい言葉を飲み込んだ、そこまでは踏み込めない

[メイン] 犬吠埼たま : 「……でも」

[メイン] 犬吠埼たま : 「このままじゃダメだというのもわかってて……」

[メイン] 犬吠埼たま : カキーン、とボールが打たれる音がその言葉のあとに響いた。

[メイン] 犬吠埼たま : 「…………このまま他人に優しくされないと、他人に甘えないと生きていけないなら」

[メイン] 犬吠埼たま : 「…………ダメになるって……もうダメになってるかもしれないけれど」

[メイン] 犬吠埼たま : ふと、わたしは握っていた手を自分から、気づけばゆっくりと解いていた。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「そ、そんなことないゾ!たまはかわいいからな、誰だってほおっておかないサ!」
そうして空いた手で頭を撫でようとした

[メイン] 犬吠埼たま : 「!」
それが、憐れみに見えたのかわたしは思わず少しだけ梅ちゃんから距離を取っていた。
目の前、もうかなり離れてしまったけれど。二人に気取られないように。

[メイン] 犬吠埼たま : 「ご、ごめんなさい……でも卒業したら、もう皆とは会えなくなります」

[メイン] 犬吠埼たま : 「だからもう私の事を忘れても、いいんです、この思い出だけしっかりと心の中にしまって……生きていきます」

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「い、いや、生徒会のみんな話忘れないと思うゾ。それに進んだ先でだあって友達ができるだロ?」
焦って、しどろもどろになって、余計にそれが信憑性も、信頼も失わせるのに

[メイン] 犬吠埼たま : 「でも……!」

[メイン] 犬吠埼たま : 「……もうこうやって会う事はなくなって……新しい友達ができても、できなくても……きっともうできないけど……できないけど、できたとしても……」

[メイン] 犬吠埼たま : 「……わたし……」

[メイン] 犬吠埼たま : どうやって言葉を繋いでいけばいいのかまったくわからず。わたしは押し黙った。

[メイン] 犬吠埼たま : 一瞬の静寂。それが流れ、また野球ボールが打たれる音が響いた後にやっと口を開いた。

[メイン] 犬吠埼たま : 「習い事も続かなくって、運動もできなくて、勉強もできなくて……生徒会の皆に勉強まで教えてもらったのに……」

[メイン] 犬吠埼たま : 「生徒会では……そういう事を隠してたけど、生徒会の外では……周りから諦められて、そして怒られて……悲しまれて憐れみを向けられて」

[メイン] 犬吠埼たま : 「……わたし、何だか……生まれるべきじゃなかったんだな、って」

[メイン] 犬吠埼たま : そう、耐えきれずにぽつりとこぼした。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「梅は……梅は……」
いつもの活発さも鳴りを潜めて、飲まれたかのように暗くなり、かける言葉もなくした

[メイン] 犬吠埼たま : ……だんだんと前の二人から距離が離れていく。
梅ちゃんがくれた手袋を、わたしは視線を落としながら見つめた。

[メイン] 犬吠埼たま : きっと、私の吐露はわがままだった。

[メイン] 犬吠埼たま : この手袋や、梅ちゃんの手の温もり
そしてりせちゃんや、たまちゃんの温もりもずうっと感じたくて
わたしは逃げ続けたかったんだ。

[メイン] 犬吠埼たま : 努力じゃどうしようもない。事実そう。けれどその為に周りの努力に期待する。

[メイン] 犬吠埼たま : でもそんなんじゃダメだからって、せめて言葉だけでも役に立とうとして
学校を歩き回ろうって提案した。

[メイン] 犬吠埼たま : …………

[メイン] 犬吠埼たま : 「梅ちゃん…………」

[メイン] 犬吠埼たま : わたしの撒いた種。種は自分が埋めたんだから。
……芽が出る前に荒らす事もしないなら、せめて。

[メイン] 犬吠埼たま : 花が咲かなくてもいい、芽すら見えなくてもいい。

[メイン] 犬吠埼たま : 言葉という水を、撒きたかった。

[メイン] 犬吠埼たま : 「……梅ちゃん!」
呟きは、いつのまにかか細いけれど、やっと他人に届かせる「声」となった。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「なっなんダ?」
苦しい笑顔を取り繕って、のけぞるようにしながらも聞き返す

[メイン] 犬吠埼たま : ずっと、ずっとわがままを我慢してたけれど、それこそわがままだった
何も言わなくても、他人が自分の為に努力してくれる。
せめて、せめてそれだけでも払拭したかった。

[メイン] 犬吠埼たま : わがままをハッキリという。きっとこれが、わたしの努力。

[メイン] 犬吠埼たま : 「わたし……!!!」

[メイン] 犬吠埼たま : 「みんなと……」

[メイン] 犬吠埼たま : 「梅ちゃんとずっと一緒にいたいのに……離れたくなんかない……!」

[メイン] 犬吠埼たま : ぽろぽろと涙をこぼしながら、わたしは梅ちゃんの手を両手で包み、ぎゅっと握っていた。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「梅は…梅はだめなんだゾ」
お互いの手に落ちる涙を見つめながら、自分も泣きそうな顔で

[メイン] 犬吠埼たま : 「ダメじゃないよ……! ダメって言わないで……!」
こんな顔の梅ちゃん、初めて見た。

[メイン] 犬吠埼たま : 「……わたし! わたし……! 何年もかかるかもしれないけど……やれる事をいっぱい掘って、掘って、掘り当てて……」

[メイン] 犬吠埼たま : 「みんなの……梅ちゃんの為になる事を探して……」

[メイン] 犬吠埼たま : 「……だから……」

[メイン] 犬吠埼たま : 「…………離れないで」

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「たまが、だんだん明るくなって、悲しい表情以外をするのがうれしかった……」

[メイン] 犬吠埼たま : 「……!」
涙を拭う事もなく、顔を上げて。梅ちゃんを見た。
梅ちゃんの、まっすぐな瞳。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「でもそれは」

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「梅じゃなくて、全部ほかの娘のおかげで……だから、梅じゃダメだったんだゾ」

[メイン] 犬吠埼たま : 「違う!」

[メイン] 犬吠埼たま : すかさず、わたしはそう声に出していた。

[メイン] 犬吠埼たま : 「りせちゃんも! たまちゃんも……私が生徒会に来た時に歓迎してくれて……! わたしを笑顔にしてくれたけど……そこには梅ちゃんもいたから……」

[メイン] 犬吠埼たま : 「わたし、ずっと生徒会で笑顔でいられるようになって……もしかすると梅ちゃんがいなかったら、二人の間に入れなかったかもしれないから……」

[メイン] 犬吠埼たま : 「生徒会に入る時だって……二人の間に入る時だって……背中を押してくれたのは」

[メイン] 犬吠埼たま : 「梅ちゃんだったもん……!」

[メイン] 犬吠埼たま : 「わたしを、妹だっていって……かわいがってくれて……おばあちゃんが亡くなって家に居場所がなかったわたしが、ずっとこうやって生きてこられたのは……!」

[メイン] 犬吠埼たま : 「梅ちゃんの……おかげ……」

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「梅は、いつも人当たりのいいことだけ言って、それで終わりだゾ。忘れちゃうかもしれないって、それ正解ダ。だからたまにそんな奴はふさわしくないゾ」

[メイン] 犬吠埼たま : 「……じゃあ、ここで終わりたくない」

[メイン] 犬吠埼たま : 「終わらせたくない」

[メイン] 犬吠埼たま : 「……梅ちゃんに忘れられたくない!」

[メイン] 犬吠埼たま : 「だから……だから…………やっぱり妹じゃなくなっちゃうかもしれないけれど……」

[メイン] 犬吠埼たま : 手を解き、左手だけ梅ちゃんの手を握り続ける。

[メイン] 犬吠埼たま : 「だから……!」

[メイン] 犬吠埼たま : 「わたし……梅ちゃんと…………ずっと一緒にいたい」

[メイン] 犬吠埼たま : 「……赤髪学校の伝説」

[メイン] 犬吠埼たま : 「一つの青春が終わる前に、左腕を好きな人に差し出したら、もう一生離れることはないって……!」

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「……私は、好きな相手がいたんだ。その子はずっとひとりで、私はその子のあとをついて回って、でも結局一緒にならないか、って言ったら私は一人でいいって」

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「だから、梅も……一人でいいんだ」

[メイン] 犬吠埼たま : 「……────梅ちゃん、少しだけ、もう少しだけ手を繋いで歩いてもいい?」
それを聞いた途端、わたしは梅ちゃんの手を握ったまま。ちょっとだけ強引に。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「あ、おい……」
うなだれて俯いた顔をあげそのまま引っ張られていく

[メイン] 犬吠埼たま : 校庭、そして校舎の中に響く音という音が合わさりながら不協和音になっている。
でもそんな中、わたしと梅ちゃんはきっと今、すごく同じ気持ちだった。

[メイン] 犬吠埼たま : 「……梅ちゃんが、梅ちゃんの事をわたしに話してくれて……嬉しい」

[メイン] 犬吠埼たま : 「梅ちゃんがなんで一人でいたいかも……それでわかったけど、けど……」

[メイン] 犬吠埼たま : 「わたしは、梅ちゃんと生徒会の外でも、優しくしてもらったからかな? すごく……自分勝手だけど自分勝手だけど……」

[メイン] 犬吠埼たま : 「わがまま言っちゃってごめんね……わたし、梅ちゃんを一人にしたくない」

[メイン] 犬吠埼たま : 「だって……わたしも、梅ちゃんがわたしを見ていたみたいに……梅ちゃんをわたしは見てたから」

[メイン] 犬吠埼たま : 「梅ちゃんがわたしにかけてくれる言葉、表情、それが全部その場その場の……口当たりの良いものだとしても、それが何かわたしにはわからないよ」

[メイン] 犬吠埼たま : 「だって、相手の事を思ってなかったら……あんなに純粋でまっすぐな目で、あんな優しい、気さくで、楽しい言葉をかけてくれない!」

[メイン] 犬吠埼たま : 「梅ちゃんにとって、いくらでもその場その場の対応だったと言いたいならわたしそれでいいけど……!」

[メイン] 犬吠埼たま : 「わたしにとっては────────」

[メイン] 犬吠埼たま : 「ずっと、それが心に残るんだから」

[メイン] 犬吠埼たま : それが無くなってしまえば。
そう、それはぽっかり空いた穴。

[メイン] 犬吠埼たま : もう埋まることのない……。

[メイン] 犬吠埼たま : わたしは、梅ちゃんをじっと見つめる。

[メイン] 犬吠埼たま : 梅ちゃんと、なるべく……同じように。

[メイン] 犬吠埼たま : 『まっすぐな』目で。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「うっ……」
その視線に耐えられず目を『そらして』

[メイン] 犬吠埼たま : きっと、わたしは梅ちゃんの心を「ひっかいて」
そして「穴」をあけようとしている。
けれど、わたしは梅ちゃんと、どうしても二人でいたい。

[メイン] 犬吠埼たま : その空いた「穴」に、私がおさまりたかった。

[メイン] 犬吠埼たま : 「……梅ちゃん、わたしを……見て?」」

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「……梅と同じ高校に合格できたら」

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「そしたら……考えとく」

[メイン] 犬吠埼たま : 「…………」
できない。いや、できないなんて考えたらダメ。
もっと強気で、図々しく、わたしは、わたしは……

[メイン] 犬吠埼たま : もう一歩、踏み出して。

[メイン] 犬吠埼たま : 「じゃあ……『今』」

[メイン] 犬吠埼たま : 「前借り……になっちゃうかもしれないけれど……!」

[メイン] 犬吠埼たま : 「合格、きっとするから……」

[メイン] 犬吠埼たま : 「わたしを……見て」

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「……わかった」
怯えた目で視線を合わせる

[メイン] 犬吠埼たま : 「! 梅ちゃん……」
そのまっすぐな瞳が重なり合って。わたしは思わず涙を流しそうになる。
ああ、やっと『一緒』だ。

[メイン] 犬吠埼たま : わたしは思わず手を解くと。

[メイン] 犬吠埼たま : ……なぜか菩薩のポーズを取った。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「????」
怯えとは違う困惑が頭を支配した

[メイン] 犬吠埼たま : 「あ、あ! これはさっき生徒会室で……たまちゃんがやってたポーズ!」

[メイン] 犬吠埼たま : 「えへへ………また一緒になれて嬉しいから……嬉しいってポーズ……」
多分、菩薩のポーズにそこまでの意味はないかもしれないけれど。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「う~んあの時はお世辞でいったけど……よくわかんないなこれ」
同じポーズをとって

[メイン] 犬吠埼たま : 「!」ガーン

[メイン] 犬吠埼たま : 「……あ、でも」

[メイン] 犬吠埼たま : 「梅ちゃんとまたお揃いだね」

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「もっと普通のお揃いでいいだロ……それこそ手袋とか」

[メイン] 犬吠埼たま : 「そうだね……じゃ、じゃあ! いつか……わたし! 梅ちゃんの為に手袋編む!」

[メイン] 犬吠埼たま : 「この手袋のお礼!」

[メイン] 犬吠埼たま : わたしは梅ちゃんからもらった手袋の感触をしっかりと手に残すように、手袋をはめたままグーと握って、パーと開く。

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「何もできないようなこと言ってたけど、いろいろできるじゃないカ。そういうのは前面に出していった方がいいんだゾ?」

[メイン] 犬吠埼たま : 「うっ……実は編むのも下手……だけど、……でも編むことぐらい……何かを見ながらやればできるもんね……! きっと!」

[メイン] 犬吠埼たま : 「…………梅ちゃん、じゃあ最後に……ううん、違う最後じゃない、これから作り上げていくイベントスチルの為の最初の一言! ……たまちゃんっぽく言えたかな?」

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「はははっ!人のまねをしないでたまっぽくしゃべったほうがかわいいゾ」

[メイン] 犬吠埼たま : 梅ちゃんが笑ってくれた。この笑顔はわたしが引き出した笑顔。

[メイン] 犬吠埼たま : その笑顔を受け取って、わたしは頷きながら。

[メイン] 犬吠埼たま : 「梅ちゃん!」

[メイン] 犬吠埼たま : 「…………」

[メイン] 犬吠埼たま :  

[メイン] 犬吠埼たま : 「好きです」

[メイン] 犬吠埼たま :  

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「わ、私は……」

[メイン] 吉村・thi・梅 :

[メイン] 吉村・thi・梅 : 「……保留」

[メイン] 吉村・thi・梅 :

[メイン] 犬吠埼たま : 「……じゃあわたし……きっと掘って掘って……掘り続けて」

[メイン] 犬吠埼たま : 「梅ちゃんの笑顔をいっぱい掘り出して」

[メイン] 犬吠埼たま : 「きっと……『好き』の一言も掘り出してみせる……!」

[メイン] 犬吠埼たま : そのために、まずは合格……頑張らないと、ね。

[メイン] 犬吠埼たま : やっと、これから
わたしはわたしを育んでいく。

[メイン] 犬吠埼たま : これから始まる。わたしの「育成計画」

[メイン] 犬吠埼たま :